惑星から見た太陽の大きさ
太陽系内の惑星から見た太陽の見かけの大きさを計算してみます。
「天体の見かけの大きさ」で計算したように、地球から見た太陽の視直径は、およそ 0.5331 度 (= 32 分) となりました。
太陽から離れるほど見かけの大きさが小さくなるのは当然の事ですが、どの程度変化するのでしょうか。
具体的に計算したものが以下の表です。
天体名 | 太陽の視直径 (度) | 太陽の視直径 (分) | 月の視直径との比 | 近日点での視直径 (度) | 遠日点での視直径 (度) | 最大/最小 |
---|---|---|---|---|---|---|
水星 | 1.377269 | 82.63614 | 2.659564936 | 1.733814 | 1.142355 | 1.517754113 |
金星 | 0.737058 | 44.22348 | 1.423290303 | 0.742085 | 0.732099 | 1.013640232 |
地球 | 0.533136 | 31.98816 | 1.02950826 | 0.542196 | 0.524374 | 1.033987192 |
火星 | 0.349904 | 20.99424 | 0.675679486 | 0.385957 | 0.320011 | 1.206074166 |
ケレス | 0.192815 | 11.56890 | 0.372333954 | 0.209354 | 0.178698 | 1.171552004 |
木星 | 0.102460 | 6.147600 | 0.197854612 | 0.107683 | 0.097719 | 1.101965841 |
土星 | 0.055901 | 3.354060 | 0.107947205 | 0.059187 | 0.052961 | 1.117558203 |
天王星 | 0.02778 | 1.66680 | 0.05364436 | 0.029131 | 0.026549 | 1.097254134 |
海王星 | 0.01773 | 1.06380 | 0.034237383 | 0.01790 | 0.017564 | 1.019130039 |
冥王星 | 0.013516 | 0.81096 | 0.02609997 | 0.018027 | 0.010811 | 1.667468319 |
ハウメア | 0.012389 | 0.74334 | 0.023923685 | 0.015429 | 0.01035 | 1.490724638 |
マケマケ | 0.011755 | 0.7053 | 0.022699404 | 0.014044 | 0.010107 | 1.389532008 |
エリス | 0.007835 | 0.4701 | 0.015129718 | 0.013843 | 0.005464 | 2.533491947 |
セドナ | 0.00098 | 0.0588 | 0.001892422 | 0.006999 | 0.000527 | 13.28083491 |
ハレー彗星 | 0.029894 | 1.79364 | 0.057726584 | 0.909829 | 0.015197 | 59.8689873 |
8 つの惑星以外にも、5 つの準惑星 (ケレス、冥王星、ハウメア、マケマケ、エリス)、1 つの太陽系外縁天体 (セドナ、詳細な区分は散乱円盤天体)、1 つの彗星 (ハレー彗星) も掲載してあります。 表は左から、天体の名称、その天体から見た太陽の平均の視直径 (度)、視直径を分に直したもの、地球から見た月の平均的な視直径との比、近日点から見た太陽の視直径 (度)、遠日点から見た太陽の視直径 (度)、近日点と遠日点での見かけの大きさの違いの比、となっています。 なお、計算には厳密な表式の方を用いていますが、近似的な表式のを用いた場合でも、誤差は最大でも水星から見た太陽の視直径の場合の 0.0024 %になるため、近似的な表式で十分正確な値が計算可能です。
各天体からの太陽の視直径を、度と分でそれぞれ比較しましたが、直感的にどの程度の大きさに見えるのか今ひとつ実感が湧きません。 そのため比較として、地球から見た月の平均的な視直径との比も表に加えました。 例えば地球から見た太陽の視直径は、月の視直径のおよそ 1.03 倍となっていて、以前に求めた通り両者はほぼ一致しています。 そのため、「月の視直径との比」の列は、「地球から見た太陽の視直径との比」と読み替えてもおおむね合っていると言えます。
太陽に一番近い、水星から見た太陽の大きさは、月の大きさの 2.66 倍にもなります。 これは面積比にすると 7 倍となります。 水星よりも遠い位置を公転する金星の場合も、金星から見た太陽の大きさは月の大きさの 1.4 倍となり、面積比だと 2 倍とかなり大きく見える事が分かります。
距離が離れると太陽の見かけの大きさはどんどん小さくなって行きます。 木星から見た太陽の大きさは月の 5 分の 1 程度、土星から見た太陽の大きさは月の 9 分の 1 程度となります。 ここまで来ると太陽の視直径は非常に小さいですが、それでもまだ大きさを持って見える (点ではなく、円盤状に見える) 大きさではあります。
人間の目の分解能は、視力 1.0 の場合は 1 分程度と言われています。 視直径が 1 分程度のものであれば、点光源ではなくギリギリ大きさを持った天体として見えるということです。 表では、海王星から見た太陽の大きさが 1.06380 度となっています。 そのため、海王星軌道あたりまでは太陽が大きさを持った天体としてギリギリ認識出来ると考えられます。 それより遠方では太陽の見かけの大きさが 1 分を切るため、肉眼では太陽の大きさを分解出来ず、点光源としてしか認識出来ません。
天体の軌道は楕円軌道であり、位置によって太陽までの距離は変化します。 そのため軌道のどの位置にいるかによって、太陽の視直径も変化することになります。 表には、近日点と遠日点それぞれでの太陽の見かけの大きさと、その比率も併せて掲載しました。 最大/最小の値が大きい方が、軌道がより細長い楕円である (つまり軌道離心率が大きい) ということに対応しています。 惑星はおおむね円軌道であるため比は 1 に近いですが、水星や火星は離心率が比較的大きいため、太陽の見かけの大きさも最大で 20% (火星) や 50% (水星) ほど変化することになります。
近日点や遠日点といった距離の変化まで考慮すると、いくつかの天体から見た太陽の見かけの大きさは逆転する事があります。
また彗星のように細長い楕円軌道をもつ天体の場合は、太陽までの距離は大きく変化するため見かけの大きさも大きく変化します。
ここでは彗星の代表例としてハレー彗星を表に加えました。
今度は逆に、太陽から見た場合の各天体の大きさを計算してみます。
今回も 8 個の惑星の他に、準惑星や太陽系外縁天体も加えてあります。
結果は以下の表のようになります。
太陽から見た惑星の大きさ
天体名 | 天体の視直径 (度) | 天体の視直径 (分) |
---|---|---|
水星 | 0.004828 | 0.28968 |
金星 | 0.006409 | 0.38454 |
地球 | 0.004886 | 0.29316 |
火星 | 0.001708 | 0.10248 |
ケレス | 0.000132 | 0.00792 |
木星 | 0.010524 | 0.63144 |
土星 | 0.004841 | 0.29046 |
天王星 | 0.00102 | 0.0612 |
海王星 | 0.000631 | 0.03786 |
冥王星 | 0.000022 | 0.00132 |
ハウメア | 0.000017 | 0.00102 |
マケマケ | 0.000013 | 0.00078 |
エリス | 0.000015 | 0.0009 |
セドナ | 0.000001 | 0.00006 |
この場合、各天体の大きさと各天体の距離の両方から視直径が決まるため、見かけの大きさは単純に距離だけでは決まらなくなります (表は昇順または降順に並び替え出来ます)。 太陽から太陽系内の天体を見た場合、最も大きく見えるのは木星です。 距離は離れていますが、大きさが圧倒的であるためこのような結果になりました。 その後、金星、地球、土星と続きます。 水星は最も太陽に近いですがサイズが小さいため、太陽から見た時の見た目の大きさは 5 番目となります。
表から分かるように、太陽から見た場合の各天体の見かけの視直径はすべて 1 分を切ります。 最も大きく見える木星ですら 0.6 分程度にしかなりません。 そのため、太陽から太陽系内の天体を見たときに肉眼で大きさを持って見える天体は無く、全て点光源としてしか観測されないということが分かります。
なお、ここの計算では惑星までの距離は平均的な距離 (軌道長半径) を用いています。
また、厳密に "太陽表面から見た大きさ" を計算する場合は軌道長半径から太陽半径を引く必要がありますが、軌道長半径は太陽半径より数桁大きいため、無視した場合の誤差は非常に小さなものになります。
参考文献
理科年表2015年04月04日
2017年06月05日 更新